こんにちは。
アトピー研究家の齋藤です。
私は1989年に始めてアメリカに行きましたが、その後も定期的にアメリカに行っています。
しかし、アトピーのアメリカ人を見たことがありません。
それはなぜでしょうか?
このページでは「アメリカ人にアトピーの人が少ない2つの理由」についてお伝えしていきます。
アメリカのアトピー有病率について
下記の記事で、アメリカのアトピーの有病率のデータをお伝えしました。
18歳未満のアメリカのアトピー有病率について
このページのデータを見ると分かりますが、アメリカの18歳未満のアトピーの有病率は平均すると約10%であることが分かります。
日本も平均すると約10%ですので、子供の有病率は変わりません。
また、成人の場合は、日本は2.1%、アメリカは4.9%と、アメリカの方が2倍以上も多いのです。
つまり、成人のアトピーの患者数は、データ上ではアメリカが日本の2倍多いのです。
アメリカでアトピーの人を見かけない理由
私は何度もアメリカに行っていますが、アメリカ人でアトピーの方を見かけた事がありません。
長いときは、2ヶ月間ほど滞在しましたが、それでもアトピーの人を見かけていないのです。
日本では大阪駅を歩くだけでもアトピーの方を見かける事が多いですが、アメリカのニューヨークなどの大都市を歩いていても、アトピーの方を見かけることがないのです。
観光地だけではなく、お昼のオフィス街などを歩いていても、アトピーのアメリカ人を見かけることはありません。
成人の場合、データ上では日本の2倍以上もアトピーの有病率が多いので、確率的には日本の2倍以上、アトピーの方を見かけても多いはずです。
しかし、実際にはそのような事はありません。
それはなぜでしょうか?
それは、2つの理由があるからなのです。
アトピーの定義について
1つ目の理由は「アトピーの定義」が違うからです。
アメリカでは「アトピー(atopic dermatitis)」という言葉は一般的ではありません。
アトピーという言葉の代わりに「湿疹(eczema)」という言葉が使われています。
つまり、アメリカではアトピーと湿疹に大きな違いはないのです。
日本では、アトピーと湿疹を明確に区別しています。
簡単に説明をすると、下記のような区別になります。
湿疹は「一時的な皮膚炎」。
アトピーは「慢性的な皮膚炎」。
そのため、すぐに治ってしまう一時的な皮膚炎は「湿疹」扱いになりますので、アトピーにはカウントされません。
しかし、アメリカの場合は、すぐに治ってしまう湿疹でも「アトピー」にカウントされてしまいます。
そのため、日本よりもアトピーの有病率は、かなり高くなってしまうのです。
湿疹の場合、一時的な皮膚炎ですので、重症化することはありません。
そのため、湿疹の症状がある方をアメリカで見かけたとしても、アトピーの方とは思いません。
しかし、アメリカでは湿疹の症状がある方もアトピーにカウントされてしまいます。
恐らく、美容師さんの手荒れなど、職業が原因の湿疹もカウントされていると思います。
そのため、データ上では、アメリカのアトピーの有病率は非常に高くなります。
しかし、日本で「アトピー」と分類される症状のある方は、実際にはかなり少ないのです。
アメリカでは、アトピーの方を見かけた事がない事を考えると、日本でアトピーと分類される症状があるアメリカ人は、1%もいないと思います。
恐らく、アメリカの成人のアトピー有病率の4.9%を日本のデータに当てはめると、0.9%がアトピーに分類され、残りの4%が湿疹に分類される可能性が高いです。
データ上ではアメリカの方が成人のアトピーの有病率が2倍も高いにもかかわらず、アメリカでアトピーの方を見かけないのは、ほとんどが「一時的な皮膚炎」であり、日本でアトピーと分類される「慢性的な皮膚炎」の方がほとんどいないからなのです。
ステロイド剤の処方について
2つ目の理由は、アメリカの皮膚科医は、簡単にステロイド剤を処方できない事です。
日本では、ステロイド剤の副作用で、皮膚が変色しているアトピーの方をよく見かけます。
もし、アメリカでも日本と同じようにステロイド剤を使用していた場合、アトピーの有病率が日本の半分程度だとしても、繁華街を歩いていれば、必ずステロイド剤の副作用で皮膚が変色している方を見かけるはずです。
特に、夏は皮膚の露出度が高くなりますので、一目見ただけで、私は判別できます。
しかし、アメリカでは日本のように、ステロイド剤の副作用で皮膚が変色している方を見かけることがないのです。
その理由は、アメリカの皮膚科医は強いステロイド剤を簡単に処方できないからなのです。
ドクターゆきさんのブログから引用します。
https://ameblo.jp/datusutenonsute/entry-12633704040.html
アメリカの皮膚科医の話では、「アメリカでは、Strongestレベル(一番強いレベル Ⅰ群)のステロイド、デルモベート軟膏なんかは、沢山ぬると血中濃度が上がることとか、皮膚委縮などの副作用の説明をしないと、患者さんに処方できない状況です。なぜなら、アメリカは訴訟の国なので、そのレベルのステロイドを処方するときは、しっかりと副作用を説明して、患者さんの同意がなければ処方できないのです。」
日本では医師の指導の下でステロイド剤を使えば、安全で副作用もでないとされています。
そのため、皮膚科に行けば、ステロイド剤についての詳しい説明もなく、簡単に強いステロイド剤を注射したり、塗り薬を処方したりします。
実際に私が皮膚科に行った時も、お医者様からステロイド剤についての説明はほとんどありませんでした。
もちろん、副作用の説明を受けた事は一度もありません。
ちなみに、日本では、薬の副作用がでた場合でも、お医者様は法律上、罪に問われることはありません。
お医者様が強いステロイド剤を出す事に、心理的な歯止めがきかない事も、薬の副作用で苦しんでいる方が増えている理由の1つだと思います。
しかし、アメリカでは、副作用の説明をしっかりと説明し、患者が同意しない限り、強いステロイド剤を患者に処方する事ができません。
そして、万が一、薬の副作用がでた場合、お医者様や製薬会社が訴えられる可能性があります。
そのため、副作用の説明をお医者様から受けて、同意書にもサインをしている方しかステロイド剤を使っていないため、アメリカ人はステロイド剤に依存するほど使用することがないのです。
これが、アメリカにステロイド剤の副作用がでているアトピーの人がほとんどいない本当の理由なのです。
まとめ
日本とアメリカのアトピーの有病率のデータを見ると、日本よりもアメリカの方が有病率が高いため、アメリカの方がアトピーに苦しんでいる方が多いと思ってしまうかもしれません。
しかし、日本とアメリカでは「アトピーの定義」が違うため、実際は日本の方がアトピーで苦しんでいる方が何倍も多いのです。
また、アメリカでは強いステロイド剤は、患者の同意がないと処方することができません。
しかし、日本では患者の同意がなくても、お医者様の判断だけで、強いステロイド剤を処方することができます。
強いステロイド剤を使っている方は、日本の方が圧倒的に多いため、アメリカでは日本のように、ステロイド剤の副作用で苦しんでいる方は、ほとんどいないのです。
アメリカのアトピーのデータは、日本と同じ基準ではありません。
そのため、データだけを見ても、単純に比較をすることができません。
単純に日本と比較をすると、全く逆の結果がでてしまう可能性があります。
また、データの取り方によっても、同じ内容の調査で違う結果が出てくることもあります。
アメリカに限らず、日本以外の国のアトピーのデータを日本のデータと比較する場合は、その国のアトピーに関する予備知識も必要になります。
今後も、世界のアトピーのデータを記事にしていきますので、データを比較したい方は、このブログを参考にしてみて下さいね。
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