こんにちは。
アトピー研究家の齋藤です。
不衛生な環境にいるとアレルギーになりにくい事から、衛生状態が良くなった事がアトピーの原因であるという「衛生仮説」があります。
それでは、「衛生仮説」は正しいのでしょうか?
このページでは「アトピーと衛生仮説」について、お伝えしていきます。
「衛生仮説」について
「衛生仮説」とは一体どのような説なのでしょうか?
「衛生仮説」で検索すると、たくさんのページがでてきますので、詳しい説明は省略しますが、簡単に説明をすると、次のようになります。
「衛生状態が良くなった事で、免疫細胞の攻撃対象であるウィルスや細菌などが体内に侵入することが減少し、攻撃対象を失った免疫細胞が、本来は攻撃対象ではない皮膚などの細胞を攻撃するようになった事がアレルギーの原因である。」
医学的には、アトピー、花粉症、喘息などのアレルギー性疾患は「免疫過剰が原因」と考えられています。
免疫過剰がアトピーの原因なので、ステロイド剤などの免疫抑制剤を使い、過剰な免疫を抑える事が「標準治療」と日本ではされています。
しかし、「なぜ、免疫が過剰なのか?」という原因に関しては、医学的には解明されていません。
その問いに対して、1989年にDavid Strachan氏が発表されたのが「衛生状態が良くなったから」という説になります。
そして、その説は「衛生仮説」と一般的に呼ばれています。
「衛生状態」とは?
「衛生仮説」の「衛生状態」とは、どのようなものなのでしょうか?
「衛生状態」とは食事の前に手を洗わないなど、非衛生的な行動の事ではありません。
寄生虫が体内にいなくなったり、病原体との接触が激減した事をいいます。
Wikipediaの「衛生仮説」より引用します。
アレルギーや慢性炎症性疾患の増加はこの100年程度の間に見られるものであり、過去200年に進んだ衛生環境の向上がその原因として俎上に上げられた。1800年代、ヨーロッパと北米では下水整備、路面清掃、食品衛生の向上などの、公衆衛生の急激な改善が進む。その結果、病原体への暴露の現象を通じ、特に1900年から1950年頃までの間に感染症の発生は急激に減少している。
Wikipediaでは、北米とヨーロッパについて書いてありますが、日本でも戦後、急速に衛生環境が向上しています。
そして、日本では1965年以降にアトピーの患者数が増えていますので、年代的に、衛生仮説はアトピー患者の増加に当てはまります。
アトピーの発症と衛生状態の関係
衛生仮説は、アトピーが増えてきた時期と衛生状態が良くなった時期が確かに一致します。
しかし、アトピーの症状を考えると、衛生仮説が当てはまらない事がたくさんあります。
私の場合、生後数ヶ月でアトピーが発症しましたが、30歳から45歳までの15年間は完治した状態が続きました。
30歳でアトピーの症状がでなくなったのは、衛生環境が悪化したからではありません。
25歳から、同じ場所に住んでいますので、衛生環境は全く変わっていないのです。
そして、もう一つは、45歳になってからのアトピーの再発に関してですが、こちらも、35歳から同じ場所に住んでいますので、衛生環境が10年間全く変わっていないのに、アトピーが再発したのです。
衛生仮説が正しい場合は、アトピーの発症は衛生状態に左右されるはずですが、実際の所は、衛生状態が全く同じでも、アトピーが発症したり、治ったりします。
日本で衛生状態が変わると言えば、農家から都会への引っ越しや、都会から農家への引っ越しになります。
しかし、アトピーが発症している人のほとんどが、引っ越しをしなくても、発症をしています。
衛生状態に変化がなくても、アトピーが治ったり、発症したりすることを考えると、アトピーの原因としての衛生仮説には説得力がありません。
アトピーの患者数と衛生状態の変化
少し前のデータになりますが、厚生労働省の患者調査の総患者数によると、2008年に約35万人だった患者数は、2017年に約51万人になったそうです。
約10年間で16万人の患者数が増えています。
しかし、2008年から2017年の10年間で、日本の衛生状態はほとんど変わっていません。
恐らく、1980年代からは、日本の衛生状態はそれほど変化がないはずです。
衛生状態が変わっていなければ、アトピーの患者数は一定数に達した時点で、これ以上増えることはないはずです。
しかし、衛生状態が変わっていないにもかかわらず、アトピーの患者数が増えている事から考えると、この点でも、衛生仮説のデータはアトピーには当てはまりません。
農家に住む子供と衛生仮説の関係
農家に住む子供はアトピーになりにくい事が分かっています。
この点に関しては「衛生仮説」は説得力があります。
いろいろな菌やウィルスに接触する機会が、農家に住んでいる子供の方が遙かに多いからです。
しかし、都会に住んでいる子供との違いは、菌やウィルスの接触だけではありません。
都会に住んでいる子供は、外に遊びに行かずに、家の中で過ごしている時間が長いです。
テレビやテレビゲームに加え、塾通いや習い事などが関係しています。
逆に、農家に住んでいる子供は、家の外で過ごしている時間が長いのです。
つまり、太陽の光を浴びながら、外で走り回っている時間が長いのです。
農家に住む子供だけ「衛生仮説」が当てはまるとは私は考えていません。
「衛生仮説」が正しい場合、衛生状態の良い都会に住んでいる子供は治らない事になります。
しかし、実際は衛生状態が変わらなくても、アトピーが治る人は一定数の割合でいます。
そのため、農家に住んでいる子供がアトピーになりにくいのは、いろいろな菌やウィルスに接触するからではなく、その他の要因が関係していると考えられます。
まとめ
衛生状態が良くなってきた頃から、日本ではアトピーの患者数が増え始めてきましたので、衛生仮説を支持している方も多いです。
しかし、しっかりと検証をしていくと、衛生状態に関係がなく、アトピーが発症する事が分かると思います。
最後に農家の例を挙げましたが、衛生仮説が当てはまりそうな環境もありますが、実際は衛生環境以外にも違いはあります。
そのため、何が違うのかについて、しっかりと検証をしていく事が、アトピーの原因解明に繋がります。
農家以外では、衛生仮説が当てはまらないのに、農家だけ衛生仮説が当てはまるという事は考えられません。
そのため、衛生環境が良くなった事がアトピーの原因ではないと考えられます。
コメント